キャッチコピーが重要な理由は何か。
それはひとえに、売り上げに直結するからです。
どれだけ優れた商品やサービスを提供していても、その魅力が伝わらなければ購入にはつながりません。逆に、ターゲットの心を動かすキャッチコピーを作ることができれば、認知の獲得や問い合わせ、購入の後押しにつながります。
しかし、考案しようと試みると「何を書けばよいのか分からない」と悩む方がほとんどです。また、キャッチコピーは「それっぽい」ものを思いついて終わりではなく、それが実際にマーケティングで効果的なのか、商標は取るべきなのか、などさまざま思考すべきことがあります。
本記事では、キャッチコピーの役割や作り方、使える言葉や表現、心理学のテクニック、やってはいけないNG例まで詳しく解説します。
キャッチコピーとは
キャッチコピーという言葉はよく耳にするものの、実際には何を指すのか曖昧に理解している人も少なくありません。まずはキャッチコピーの意味と、似た言葉との違いを確認しておきましょう。
キャッチコピーの定義
キャッチコピーとは、商品やサービス、企業の魅力を短い言葉で伝え、ユーザーの興味や関心を引き付けるための文章のことです。
キャッチコピーは、「catch(注意を引く)」と「copy(広告文)」を組み合わせた和製英語であり、広告や販促活動において広く使われています。1
ちなみに、英語圏では「catchphrase」「slogan」「tagline」などといわれます。
例えば、広告で最初に表示される一文や、Webサイトのファーストビューに掲載される見出しなどは、キャッチコピーとして機能しています。
キャッチフレーズとの違い
キャッチコピーと似た言葉に「キャッチフレーズ」があります。
実際のところ、この2つは明確に区別されずに使われることも多く、意味も非常に近い言葉です。
そもそもキャッチコピーは和製英語であり、英語圏では「catchphrase(キャッチフレーズ)」という表現が使われます。そのため、本来の意味に大きな違いはありません。
ただし、日本では使われる場面によって区別されることがあります。
一般的にキャッチコピーは、商品やサービスを宣伝し、購入や問い合わせなどの行動を促すための言葉として使われます。例えば、スズキの軽自動車「ハスラー」の「遊べる軽」のように、商品の特徴や魅力を端的に伝えるフレーズが該当します。
一方、キャッチフレーズは広告や宣伝だけでなく、企業理念やブランドメッセージ、自己PRなど幅広い場面で使われます。就職活動で「自分を一言で表す言葉」として用いられるのも、キャッチフレーズの代表的な例です。
つまり、キャッチコピーは主に宣伝目的で使われる言葉、キャッチフレーズは宣伝以外も含めた幅広い用途で使われる言葉と考えると分かりやすいでしょう。
もっとも、実務上は両者を厳密に使い分けるケースは多くありません。そのため本記事では、商品やサービスの魅力を伝え、ユーザーの興味を引く言葉を総称して「キャッチコピー」として解説します。
キャッチコピーの役割
キャッチコピーは、単に目立つ言葉を並べればよいというものではありません。ここでは、キャッチコピーが売上に与える影響と、具体的な役割について解説します。
認知してもらう
まず、商品やサービスの存在をお客様に知ってもらえなければ、どうにもこうにもなりません。
しかし現代の消費者は、毎日膨大な情報に接しています。その中で自社の商品やサービスに注目してもらうことは簡単ではありません。そこで重要になるのがキャッチコピーです。
キャッチコピーは、ユーザーが商品やサービスと接する最初の入り口です。短い言葉で興味を引き、「詳しく知りたい」と思わせる役割を担っています。
認知されなければ比較検討もされず、当然ながら購入にもつながりません。キャッチコピーの最初の役割は、商品やサービスの存在に気付いてもらうことです。
お客様を絞り込む
意外と理解されていないのが、この役割です。
多くの企業は、できるだけ多くの人に商品やサービスを知ってもらいたいと考えます。しかし、キャッチコピーの役割は単に人を集めることではありません。
むしろ重要なのは、本当に商品やサービスを必要としている人を集めることです。
ターゲットと合わない人が興味を持ち、購入や申し込みをしてしまうと、「思っていたものと違った」「自分には合わなかった」といった不満につながる可能性があります。その結果、クレームやネガティブな口コミが発生し、本来獲得したかった顧客からの信頼まで損なうことになりかねません。
キャッチコピーには、人を集める役割だけでなく、誰のための商品なのかを明確にし、適切なお客様を選び出す役割もあるのです。
購買してもらう
当たり前ですが、商品やサービスを知ってもらい、適切なお客様を集められたとしても、それだけでは売上にはつながりません。最終的には「欲しい」「使ってみたい」「今すぐ申し込みたい」と思ってもらう必要があります。
そこで重要になるのが、購買意欲を高めるキャッチコピーです。
例えば、商品の特徴やメリットを分かりやすく伝えるだけで購入につながるケースもあります。一方で、まだ課題を自覚していないユーザーに対しては、「なぜその商品が必要なのか」を気付かせるようなメッセージが求められることもあります。
キャッチコピーは単なる説明文ではありません。ユーザーの感情や欲求に働きかけ、行動を後押しする役割を担っています。だからこそ、優れたキャッチコピーは売上に直結するのです。
良いキャッチコピーの作り方
良いキャッチコピーの条件は次の三つの要素がしっかりと決まっているものです。
誰に(ターゲット)
何を(ウリ)
どうやって(キャッチコピー)
キャッチコピーの言葉や表現そのものはターゲットやウリが定まってから決めることが重要です。
誰に(ターゲット)
キャッチコピーを作る上で、最初に決めるべきことは「誰に向けて伝えるのか」です。
多くの人は、できるだけ幅広い層に響くキャッチコピーを作ろうとします。しかし、全ての人をターゲットにした結果、誰の心にも刺さらなくなるケースは少なくありません。
なぜなら、人によって抱えている悩みや課題は異なるからです。ある人にとってはどうでもよい商品やサービスでも、別の人にとっては10万円払ってでも今すぐ欲しいものである場合は十分にあります。
だからこそ、ターゲットを絞り込むことが重要です。
例えば、「誰でも美味しく飲めるカフェ」という表現では、他店との違いが分かりません。一方で、「グルテンフリーとヴィーガンメニューを提供するカフェ」や「勉強や仕事に集中できる長居歓迎のカフェ」であれば、特定のニーズを持つ人に強く訴求できます。
ターゲットを考える際は、年齢や性別といった属性だけでなく、その人が抱えている悩みやコンプレックス、ストレス、課題に注目することが大切です。
キャッチコピーは言葉のセンスで作るものではありません。まずは、誰のための商品・サービスなのかを明確にすることが出発点です。
何を(ウリ)
ターゲットが決まったら、次は「何を伝えるのか」を考えます。
ここで重要なことは、自社の商品やサービスの特徴ではなく、お客様が買う理由を見つけることです。
「買ってみるまで本当の良さは分からない」というのが残酷ですが現実です。お客様は「良い」ものだから買うのではありません。「良さそう」だから買います。「おいしい」から食べるのではなく、「おいしそう」だから食べるのです。
だからこそ、キャッチコピーでは商品のスペックや機能を説明するだけでは不十分です。お客様がその商品やサービスを利用することで得られる価値を伝える必要があります。
例えば、「小さい手帳」という表現は単なる特徴の説明です。しかし、「持ち運びに便利な手帳」と表現すれば、その特徴がお客様にどのようなメリットをもたらすのかが伝わります。
このように、機能的価値ではなく情緒的価値を伝えることが重要です。
具体的には、次のような価値は多くの人の関心を引きやすい傾向があります。
健康や子どもの成長、住まいの安全性など命に関わること
美容やアンチエイジング、ダイエット、ファッションなど見た目に関わること
時短やスピードアップなど手間に関わること
不安や痛みなど感情に関わること
売上向上やコスト削減などビジネス上の課題に関わること
キャッチコピーを考える際は、「この商品にはどんな機能があるか」ではなく、「お客様はこの商品によってどんな未来を手に入れられるのか」を考えることが大切です。
どうやって(キャッチコピー)
ここまできて、ようやく言葉選びそのものの工程に入ります。
キャッチコピーというと、優れたコピーライターが一瞬で思いつくもののように感じるかもしれません。しかし実際には、多くのキャッチコピーは試行錯誤の末に生まれています。
最初から完璧な一文を作ろうとするのではなく、まずは思いつく言葉やフレーズを書き出してみることが大切です。その上で、言葉の順番を変えたり、不要な表現を削ったりしながら少しずつ磨き上げていきます。
また、自分では良いと思ったキャッチコピーでも、他人が見れば伝わりにくいことも少なくありません。可能であれば第三者に見てもらい、「何を伝えたいのか一瞬で分かるか」を確認してみるとよいでしょう。
キャッチコピーはひらめきだけで作るものではありません。言葉を選び、比較し、改善を繰り返しながら完成度を高めていくものです。
キャッチコピーに使える言葉
キャッチコピーには絶対的な答えはありません。しかしながら、人の心を動かして、購買に結びつける強い言葉、というのは存在します。
具体的な数字
キャッチコピーには絶対的な正解はありません。しかし、人の心を動かし、購買につながりやすい言葉には一定の共通点があります。
その代表例が「数字」です。数字には、曖昧な表現を具体的な情報へ変える力があります。人は具体的な情報ほど信頼しやすく、内容をイメージしやすくなるためです。
例えば、「集客に成功する方法」よりも「来店客を2倍にする方法」の方が、どのような成果が得られるのかをイメージしやすくなります。また、「リピーター続出」という表現は人によって受け取り方が異なりますが、「10人に8人がもう一度買っています」と表現すれば、商品の評価をより具体的に伝えられます。
価格訴求でも同様です。「今だけ半額」と伝えるよりも、「通常価格1,980円が今なら990円」と伝えた方が、お得感をイメージできます。
数字は説得力を高めるだけでなく、ユーザーの目を引く効果もあります。キャッチコピーを考える際は、数値化できる要素がないかを探してみるとよいでしょう。
オノマトペ
オノマトペとは、音や状態、感覚を言葉で表現したものです。
キャッチコピーでは、商品の特徴や使用感を直感的に伝えられるため、よく活用されています。
長い説明をしなくても商品の魅力をイメージさせるオノマトペの例は次のとおりです。
サクサク
ふわふわ
ツルツル
ピカピカ
ガツガツ
ワクワク
例えば、「軽い食感のお菓子」よりも「サクサク食感のお菓子」の方が、実際に食べたときの感覚を想像できます。また、「楽しめるイベント」という表現よりも、「ワクワクが止まらないイベント」の方が感情に訴えやすくなります。
オノマトペは子ども向け商品だけでなく、美容、食品、旅行、エンタメなど幅広い分野で活用されています。
ただし、多用すると幼い印象や安っぽい印象を与えることもあります。ターゲットやブランドイメージに合わせて使うことが大切です。
気持ちを表す言葉
人は論理で納得し、感情で行動するといわれています。そのため、キャッチコピーでは商品の特徴を説明するだけでなく、感情に働きかける言葉を使うことも一つの方法です。
例えば、次のような言葉は、人が強く反応しやすい感情を直接表しています。
後悔
絶望
嫉妬
恐怖
また、次のような人間の本能や感情に直結する言葉も強い印象を与えます。
生命
生きる意味
戦争
激痛
犯罪
さらに、次のような感嘆詞はユーザーの注意を引くきっかけとして活用できます。
「あっ!」
「えっ?」
「まじ?」
「うそでしょ?」
「トホホ…」
特に効果的なのが、感情を実体験と結びつける方法です。例えば、「私はこれで人生が変わりました」といった表現は、単なる商品説明よりも読み手の共感を得やすくなります。
また、感情を直接表現するだけでなく、情景や体験を想像させる方法もあります。例えば、「美肌」という言葉よりも、「さわりたくなる肌」と表現した方が、実際の状態をイメージできます。
キャッチコピーでは商品のスペックを伝えるだけでなく、「どんな気持ちになれるのか」「どんな未来を手に入れられるのか」を想像させることが重要です。
業界用語・初耳の言葉・英語
人は知らない言葉や聞き慣れない言葉を目にすると、「それは何だろう?」と気になる傾向があります。
そのため、あえて業界用語や専門用語を使うことで、ユーザーの興味を引いたり、専門性や権威性を演出できます。
例えば、美容業界で使われる「エクソソーム」や「NMN」といった言葉は、その意味を知らなくても「最新技術なのだろう」「専門的な成分なのだろう」という印象を与えます。
英語も同様です。例えば、「結果にコミットする」というフレーズは、「結果に責任を持つ」と表現するよりも印象に残りやすく、独自の世界観を演出しています。
また、「イノベーション」「アップデート」といった言葉も、業界によっては強い訴求力を持ちます。
課題に関連する言葉
人は自分が抱えている悩みや課題に関する言葉に強く反応します。
そのため、ターゲットが日頃から気にしているキーワードをキャッチコピーに盛り込むことで、「これは自分に関係がある話だ」と感じてもらいやすくなります。
例えば、次のような言葉は、それぞれ特定の悩みや願望と結び付いています。
ダイエット
猫背
不眠症
肌荒れ
結婚
モテたい
彼氏がほしい
集客
融資
黒字
合格
例えば、「理想の体型へ」よりも「ダイエットを成功させたい方へ」の方が対象者は明確になります。また、「売上アップを実現」よりも「集客に悩む店舗経営者へ」の方が、悩みを抱えている人の目に留まりやすくなります。
人は自分に関係のない情報を無意識に読み飛ばしています。だからこそ、キャッチコピーでは商品の特徴を伝える前に、相手が抱える課題を言葉にすることが重要です。
まずはターゲットがどのような悩みや願望を持っているのかを整理し、それに関連する言葉が使えないか考えてみましょう。
キャッチコピーに使える表現
キャッチコピーでは、何を伝えるかだけでなく、どのように伝えるかも重要です。同じ内容であっても、表現を少し変えるだけでユーザーの受ける印象は大きく変わります。
疑問形
人は質問されると、無意識にその答えを考えてしまいます。そのため、疑問形のキャッチコピーはユーザーの思考を止め、続きを読んでもらうきっかけを作れます。
特に、ターゲットが抱える悩みや課題を問いかける形にすると効果的です。
例えば、次のような表現は、自分事として捉えてもらいやすくなります。
「その肌荒れ、放置していませんか?」
「なかなか集客できない原因をご存じですか?」
「本当に今の保険で安心できますか?」
希少性・限定
人は、いつでも手に入るものよりも、手に入りにくいものに価値を感じる傾向があります。
そのため、数量や期間、地域などを限定することで、商品やサービスの魅力を高めることができます。
例えば、次のような表現が代表的です。
「1日10食限定」
「先着100名様限定」
「今月末まで」
「沖縄でしか採れない◯◯」
「この季節だけの特別メニュー」
ただし、実際には限定ではないにもかかわらず希少性を演出することは避けるべきです。ユーザーの信頼を損なうだけでなく、景品表示法などの問題につながる可能性もあります。
希少性は強力な表現ですが、事実に基づいて活用することが大切です。
名指し
名前や属性を呼びかける表現は、読み手の注意を引きやすいテクニックの一つです。
人は、自分に関係があると感じた情報に対して自然と目を向ける傾向があります。そのため、対象者を具体的に示すことで、キャッチコピーを読み飛ばされにくくなります。
例えば、次のような表現です。
「銀行融資が通らずお困りのあなたへ」
「30歳になったら読むべき本」
「本気で売上1億円を目指す人以外、買わないでください」
これらのキャッチコピーは、商品の特徴を説明しているわけではありません。しかし、対象者が明確なため、「自分のことかもしれない」と感じた人の注意を引くことができます。
情報量が多い時代だからこそ、まずは立ち止まってもらうことが重要です。名指しは、そのための有効な表現方法の一つといえます。
否定形
キャッチコピーでは、あえて否定的な表現を使う方法があります。
通常、広告では商品の魅力やメリットを伝えることが一般的です。しかし、あえて常識に反する表現や否定的な言葉を使うことで、「どういう意味だろう?」と興味を引くことができます。
例えば、次のような表現です。
「不動産は買うな」
「安さでは勝負していません」
「誰にでもおすすめできる商品ではありません」
一見すると商品やサービスの魅力を伝えていないように見えますが、だからこそ続きを読みたくなります。
ただし、単に否定的な言葉を使えばよいわけではありません。読み進めた先で納得できる理由や根拠を提示できなければ、かえって不信感を与えてしまいます。否定形はユーザーの注意を引く強力な表現ですが、その後の説明まで含めて設計することが重要です。
実績
実績は、商品やサービスの信頼性を高める代表的な表現です。
初めて見る商品やサービスに対して、多くの人は「本当に効果があるのか」「安心して利用できるのか」を判断できません。そこで役立つのが実績です。
例えば、次のような表現が挙げられます。
「全世界で1秒に1個売れています」
「累計利用者数100万人突破」
「導入企業5,000社以上」
特に数字を伴う実績は客観性が高く、ユーザーに安心感を与えやすくなります。
また、実績は商品の特徴を説明しなくても価値を伝えられるというメリットがあります。なぜなら、多くの人に選ばれているという事実そのものが、商品の品質や信頼性を裏付ける材料になるからです。
ただし、実績を使用する場合は事実に基づくことが大前提です。根拠のない表現や誇張された実績は、信頼を損なう原因になるため注意しましょう。
やってはいけないNGキャッチコピー
キャッチコピーには効果的な型がある一方で、避けるべきパターンも存在します。ここでは、避けるべきNGキャッチコピーを紹介します。
抽象的すぎる
キャッチコピーで最も多い失敗は、抽象的な表現に終始してしまうことです。
作り手は意味を理解していても、初めて見る人には何を提供しているのか伝わらないケースは少なくありません。
例えば、次のようは表現です。
「日本の未来を明るくします」
「最先端のAI技術で、過去最高の精度」
「多くの企業にご好評いただいております」
「どこでも便利なバッテリー」
これらは一見すると魅力的に見えますが、「具体的に何が良いのか」「自分にどんなメリットがあるのか」が分かりません。
キャッチコピーでは、作り手が伝えたいことではなく、読み手が知りたいことを伝えることが重要です。
専門的すぎる
前述のとおり、専門用語を使えば専門性を演出できますが、使いすぎは逆効果です。
業界では当たり前に使われている言葉でも、一般のお客様にとっては意味が分からない場合があります。例えば、ITや金融、医療などの分野では専門用語だけでキャッチコピーを作ってしまうケースがあります。しかし、意味が理解できなければ興味を持つ前に離脱されてしまいます。
業界用語は、あくまで興味を引くためのスパイスです。ターゲットが理解できる範囲で活用することが大切です。
説明的すぎる
もちろん、あえて詳細な説明を行うことで信頼性を高める手法もあります。しかし、キャッチコピーの段階で情報を詰め込みすぎると、何を一番伝えたいのかが分からなくなってしまっては本末転倒です。
例えば、「創業30年の実績を持ち、全国対応でサポート体制も充実した業界最安水準のサービスです」といった文章は情報量が多いものの、印象には残りません。
キャッチコピーの役割は説明することではなく、興味を持ってもらうことです。
伝えたいことが複数ある場合でも、まずは一番の魅力に絞り込むことを意識しましょう。
キャッチコピーに関連する心理学
優れたキャッチコピーの背景には、人の意思決定や感情の動きを研究した心理学が活用されています。ここでは、キャッチコピー作りに役立つ代表的な心理学の考え方を紹介します。
アンカリング効果
前述した「具体的な数字」が効果的な理由の一つに、アンカリング効果があります。
アンカリング効果とは、最初に与えられた情報によって、その後の判断や意思決定が左右される心理現象のことです。
アンカリング(Anchoring)には「錨を下ろす」という意味があります。船が錨によって行動範囲を制限されるように、人の思考も最初に受け取った情報を基準に考える傾向があります。
キャッチコピーでも同様に、「業界No.1」「顧客満足度98%」といった情報を最初に見せることで、その後の説明や商品の印象を有利にできます。
つまり、数字そのものに意味があるだけではありません。最初に何を伝えるかによって、読み手の受け取り方が大きく変わるのです。
バンドワゴン効果
バンドワゴン効果とは、多くの人に選ばれているものほど、自分も価値があると感じやすくなる心理現象のことです。
「バンドワゴン」とは、元々パレードの先頭を走る楽隊車を意味します。楽隊の後ろに人々が集まり、行列が大きくなっていく様子から、多くの人が選んでいるものに自分も惹かれる心理を表す言葉として使われるようになりました。
身近な例としては、飲食店の行列が挙げられます。本来は味を知らないにもかかわらず、長い行列を見ると「きっとおいしいのだろう」と感じて並びたくなる人は多いです。実際には、この心理を活用した「行列マーケティング」という考え方もあります。あえて席数を少なくしたり、店舗の外に待機列ができるようにしたりすることで、人気店であることを演出する手法です。
キャッチコピーでも、「累計販売数100万個突破」「利用者数10万人突破」といった表現がよく使われます。
これらは商品の特徴を直接説明しているわけではありません。しかし、「多くの人に支持されている」という事実を示すことで、信頼感や安心感を与えられます。
実績や利用者数を示すことは、購買意欲を高める有効な手法の一つなのです。
プロスペクト理論
プロスペクト理論とは、人は「得をする喜び」よりも「損をする痛み」を強く感じるという考え方です。
例えば、1万円もらったときの嬉しさよりも、1万円失ったときのショックの方が大きく感じられる人は少なくありません。
キャッチコピーでも、この心理はよく活用されています。
例えば、「キャンペーン終了まであと3日」「この機会を逃すと二度と手に入りません」といった表現です。
これらは「行動しなかった場合に失うもの」を意識させることで、ユーザーの背中を押しています。もちろん、過度に不安をあおる表現は逆効果です。しかし、人は利益を得ること以上に損失を避けたいと考える傾向があります。
そのため、キャッチコピーを考える際は、「この商品を買うと何が得られるか」だけでなく、「買わないと何を失うのか」という視点も有効です。
認知的不協和
認知的不協和とは、自分の中に矛盾する考えや感情が存在するときに生じる不快感のことです。
有名な例として「酸っぱいブドウ」の寓話があります。キツネは食べたかったブドウに手が届かなかったため、「どうせあのブドウは酸っぱくておいしくない」と考えることで、自分の中の矛盾を解消しました。
キャッチコピーでは、この心理を逆に利用できます。
例えば、「食べながらダイエットしたい方へ」「広告費ゼロで集客したい経営者へ」といった表現です。
また、「1日1時間の副業で1億円稼ぐ方法」のように、一見すると両立が難しそうな内容を組み合わせたキャッチコピーが注目を集めるのも認知的不協和が関係しています。読み手は「本当にそんなことが可能なのか?」という違和感を覚え、その矛盾を解消するために続きを読もうとするのです。
優れたキャッチコピーは、商品を語る前に、まず相手の心の中にある矛盾や葛藤を言語化していることが少なくありません。
キャッチコピーに関するQ&A
最後に、キャッチコピーに関するよくある質問とその解答を紹介します。
ペルソナを設定することは有効?
ペルソナとは、製品やサービスを利用する理想的な顧客像のことです。マーケティングでは、年齢や職業、価値観、ライフスタイルなどを具体的に設定した架空の人物モデルを指します。2
ただし、いきなり細かな人物設定を作り込む必要はありません。まず考えたいのは、その人の購買意欲です。
例えば、ターゲットは大きく次の三つに分けられます。
今すぐほしい
検討中
自分のニーズに気づいていない
この軸を間違えると、どれだけ詳細なペルソナを作ってもキャッチコピーは刺さりません。
まずは「どんな人か」ではなく、「どの段階にいる人か」を整理し、その後でペルソナを具体化していくことが重要です。
購買意欲によってキャッチコピーは変わる?
前述したように、キャッチコピーはターゲットの購買意欲によって大きく変わります。
例えば、今すぐ購入を検討している人は、すでに情報収集を終えているケースが少なくありません。そのため、「高性能」や「高品質」といった曖昧な表現よりも、「処理速度が10%向上」「電気代を年間3万円削減」のような具体的な機能や数値の方が響きやすくなります。
一方で、購入を検討している段階の人には、商品のメリットや他社との違いを伝えることが重要です。例えば、「業界最安値」や「導入企業5,000社以上」といった特徴を伝えることで、比較検討の材料を提供できます。
また、自分の課題やニーズにまだ気付いていない人に対しては、商品の機能を説明しても反応は得られません。まずは、「その肩こり、姿勢が原因かもしれません」「広告費をかけなくても集客できる方法があります」といった形で興味を持ってもらい、課題を認識してもらうことが優先です。
このように、同じ商品やサービスであっても、相手がどの段階にいるかによって効果的なキャッチコピーは変わります。
キャッチコピーは変更してもよい?
もちろん変更して問題ありません。
キャッチコピーは一度作ったら終わりではなく、成果を見ながら改善していくものです。どれだけ時間をかけて考えたキャッチコピーでも、売上や問い合わせにつながらなければ見直す価値があります。
ただし、いきなりターゲットを変えるのはおすすめできません。まずはターゲットをそのままにして、キャッチコピーの文言や表現だけを変更してみましょう。
例えば、次のような改善方法があります。
メリットの見せ方を変える
数字を追加する
疑問形にする
ターゲットの悩みを前面に出す
それでも成果が出ない場合は、「そもそも狙うべきターゲットが間違っている可能性はないか」を検討します。
ターゲットが変われば、抱えている悩みや求める価値も変わります。そのため、ターゲットを変更する場合は、キャッチコピーも合わせて見直す必要があります。
まずは文言の改善から始め、それでも成果が出ない場合にターゲットを再検討する、この順番で進めることで効率よくキャッチコピーを改善できます。
生成AI(ChatGPTなど)でキャッチコピーを作れる?
生成AI(ChatGPTなど)でキャッチコピーを作ることは可能です。
ただし、生成AIが作るキャッチコピーは、どうしても無難な表現になりやすい傾向があります。そのため、出力された内容をそのまま使うと、他社との差別化が難しいです。
一方で、生成AIはアイデア出しには非常に向いています。
そもそも良いキャッチコピーは、1案だけ考えて完成するものではありません。プロのコピーライターでも何百本もの候補を作り、その中から最も効果的な表現を選ぶことがほとんどです。
生成AIは、この候補出しを短時間で行えます。異なる切り口の提案やターゲットごとの表現の出し分けも得意なため、発想を広げる際に役立ちます。
AIが出した候補をたたき台にして、人間がブラッシュアップするといった方法が理想的です。
キャッチコピーは専門家に依頼するべき?
必ずしも専門家に依頼する必要はありません。
商品やサービスのことを最も理解しているのは、自社や自分自身だからです。そのため、まずは自分で考えてみる価値があります。
一方で、キャッチコピーは数文字違うだけで反応率が変わることもあります。専門家はターゲットの心理や購買行動を踏まえて言葉を選ぶため、自分では思いつかない切り口を提案してくれるため、より効果を得たい場合は専門家に依頼するのも一つの手です。
まずは自分で複数の案を考えたり、生成AIを活用して候補を出したりした上で、必要に応じて専門家の力を借りると良いでしょう。
まとめ
キャッチコピーは、商品やサービスの魅力を短い言葉で伝え、ユーザーの興味を引き、購入や問い合わせなどの行動を後押しするための文章です。単に目立たせるだけでなく、商品を認知してもらい、ターゲットを絞り込み、購買意欲を高める役割を担います。
良いキャッチコピーを作るためには、最初に「誰に伝えるのか」を明確にし、次に「何を魅力として伝えるのか」を整理することが重要です。ターゲットや商品のウリが曖昧なまま言葉だけを工夫しても、読み手の心に残るキャッチコピーにはなりません。
表現を考える際には、具体的な数字やオノマトペ、感情や課題に関する言葉を活用できます。疑問形や限定性、名指し、実績などを取り入れることで、ユーザーの注意を引き、内容を自分事として捉えてもらいやすくなります。
一方で、抽象的すぎる表現や専門用語の多用、情報を詰め込みすぎた文章は、商品の魅力を分かりにくくする原因になります。読み手が一目で意味を理解でき、自分にどのようなメリットがあるのかを想像できる表現を意識することが大切です。
キャッチコピーは、一度作成したら終わりではありません。複数の案を作り、売上やクリック率、問い合わせ数などの成果を確認しながら改善していく必要があります。生成AIも候補を広げる手段として活用できますが、最終的には商品や顧客を理解している人が内容を精査し、独自性のある表現へ磨き上げることが重要です。
パープレンスでは、ターゲットや商品の強み、競合環境、ブランドの方向性を整理したうえで、キャッチコピーの開発を支援しています。商品やサービスの価値を的確に伝え、認知や問い合わせ、売上につながるキャッチコピーを検討している方は、パープレンスへご相談ください。
